恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。
米澤さんの本はこれで2冊目。
この本の感想もやはり難しい。何故だ??
前回の『春期限定いちごタルト事件』に比べると最初からスピードがあった。
それについて行くことも出来た。
主人公嵯峨野リョウは東尋坊から崖下へ落ちてしまう。気づいたら「僕がいるはずのない世界」。そしてこの世界にはリョウの住む世界には存在しない人間や木が存在している。
元の世界に戻れるのか?という疑問が。この世界では生きていけないのだ。
だって戸籍も何もないのだから。
ある意味これってホラーだよね。
素直に心からおもしろかった〜とは言いがたいかもしれない。
多分ラストを読み取る力に欠けているからだと思う。
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ここからは思い出話。
私は結婚して8年目を迎えた。
8年前にこの物語の舞台である東尋坊を歩いてきた。なぜ新婚旅行に東尋坊??と
思うかもしれないが金沢方面に行こうと決めて「るるぶ」を何気に見ていたら、東尋坊を
知った。そしてここに絶対に行こうと決めた。
あの崖下をのぞいた時の恐怖といったらない。この小説にも出てくる遊歩道というか
下へ下りる階段があった。あの階段を大きなお腹をした妊婦さんが歩いていた。
すべって落ちたらどうするんだと思い、ハラハラしたのが記憶にある。
本を開くまでこの表紙の絵を見ても、これがあの東尋坊とはビックリだった。
思わず夫に「この絵、東尋坊だって」と言ったら、たったひと言
「へえ〜」それだけかい。
車で行った旅行。あんなに車を走らせたのもあの時がはじめてだった。(私はずっと助手席であったが)
だんだん感覚は麻痺して「金沢まで100km」なんていう標識を見ると「近い、
あともう少しだね」なんて言っていた。
だからこの日本海の寒々しさ。東尋坊の怖さを思い出しながら読むことが出来た。