家日和
奥田 英朗
奥田さんの本は最近読んでいなかったからカテゴリーにも入っていなかった。
サニーデイ
ここが青山
家においでよ
グレープフルーツ・モンスター
夫とカーテン
妻と玄米御飯
6編からなる短編小説。
どれも物語最初はこの夫婦大丈夫かな〜と心配になり、私だったら離婚するかもと思う
ほどの話だった。しかしラストはどれも新婚の夫婦にはない夫婦の絆を感じるものであった。
夫とカーテンはそのギャップの代表的なもの。
夫、栄一は突然妻の春代に「カーテン屋を始める」と言い出す。
場所は品川駅前。品川エリアの湾岸沿いの新築マンションの建設ラッシュに目を付けたわけだ。芝浦から天王洲までどれも超高層マンションが立ち並ぶ。
新築マンションを買うとちょっと値がはるカーテンが欲しいだろうという事だ。
春代は当初反対をしていた。巧みな話術で信金の融資の話が勝手に進んでしまう。
子供がまだいない夫婦で、春代はイラストレーターの仕事を自宅でこなす。
仕事の期限が迫っているがカーテン屋のオープン準備も手伝う。
この人奥さんに捨てられちゃうんじゃないの?という疑問に駆られたが、カーテン屋も軌道に乗りホッと一安心。
ラストの会話がとっても好き。
春代のイラスト案が浮かばず今晩のおかずを考え栄一に連絡をする。
「今夜、酢豚でいい?」
「うん、いいよ。ピーマン抜きでね」
「子供みたいなこと言わないの。じゃあ、パプリカにしてあげる」
「パプリカって何だっけ」
「そういう野菜。ねえ、お店繁盛してる?」
「してる、してる……」
電話を切ると春代はとても幸せな気持ちになり、キッチンへと向かった。
してるなんてまたウソをついてるんだろうと思って読んでいたら、どうやら本当らしい。
純愛小説にはどうしても手が出ない私だが、こんな愛情小説の世界に久しぶりにどっぷりひたってよかった。